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登場人物 小田切べー太

本作品の主人公。
内気なわりに調子のいいやつ。
何か特別な秘密があるような、無いような。
「僕の体ってどこか変?」
[番外編]--ピノキオ | permalink | comments(0) | trackbacks(0)

登場人物 高村アイチ

毎度おなじみのヒロイン。
かつて世界を救った魔法少女。しかも現役。
内弁慶だったのは過去のこと。
今では可愛いと思って調子に乗っている自称スーパースター。
「私ってなんでこんなに美人なんだろ、ねぇどうしてかな?」
[番外編]--ピノキオ | permalink | comments(0) | trackbacks(0)

ピノキオ故障中! 001

 「ウソだ」
 こんなことってあるだろうか。
 だって、さっきまではどこにでもある普通の光景だったのに。
 友達と遊ぶ高校生や営業さぼりのサラリーマン、午後のお茶会を楽しむ主婦連中・・・。
 なのに今では駅前が瓦礫の山になっている。
 空には全長100メートルはある極彩色の巨大な・・・イカ?が浮かんでいる。
 いやイカじゃない、僕は知っている、あれはベレムナイトだ。絶滅したイカの祖先、アンモナイトの一種。固い貝殻は円錐状の形をしている。
 もちろんこんな巨大なものはいないし、まして空を飛ぶわけがない。
 何本となくある足?腕?が数十メートルと伸び、ビルを叩く。ガラガラとコンクリートが崩れ落ちた。
 目をギョロッとさせたかと思うと、急に貝殻がドリルのように回転した。ギュリュリュリュリュという金属音が響く。
 高速で地面に突撃し、そのまま地面にもぐった。地鳴りが地底を進む。
 そしてアスファルトを突き破り再び空中へと飛び出した。通り道が陥没する。
 誰も止めない、止められない。完全に自衛隊の出番だ。
 そんな時、雲の切れ間から光が走る。飛行機だ。
 少し遅れてエンジン音が聞こえた。音速を超えているのだ。見たところ旅客機じゃない、明らかに戦闘機だ。
 でも一機だけ。

――あれ?

 今まで逃げ惑い、疲れていた人々、特に若者たちが歓声を上げ始めた。むしろ若者は増えている。

「「「キター」」」

 戦闘機は空中でうねっているベレムナイトに突っ込んでいく。
 バルカン砲が制射されヴゥゥゥゥゥゥムという音ともに巨大生物の表面が弾ける。機体はそのまま横をすり抜けた。特に効果が無いようだった。
 しばらくの間があった後、Uターンした戦闘機は翼に搭載するミサイルを四発発射した。
 ロケット噴射しながらロックオンされたミサイルは目標に迫る。
 しかし直撃する前に数本の腕に叩き落とされた。上空で爆発が起き、巨大生物の触手は先が砕けた。
 だが、すぐに再生が始まる。もとのワインレッドの腕が生えてきた。

――怪獣じゃん

 怪生物とか巨大生物とかそんな遠まわしな言い方じゃない。
 明らかに怪獣だ。
 気がつくと戦闘機は昼の太陽の方向、真上から落ちてきた。残りの四発のミサイルも発射された。
 怪獣の死角になっているのか、触手の防御が間にあわない。全弾が見事に命中する。
 轟音とともに集中した爆発が巨大な炎を上げる。戦闘機は衝撃と爆炎から寸前で離脱した。

――すごい、何がなんだかわからないけど

 安心した瞬間、煙の中から一条の光が伸び、戦闘機をかすめた。それだけで片方の翼が溶けてしまった。
 真っ黒な煙の中からほとんど無傷の怪獣が姿を現す。
 今のはいわゆる怪光線だったのか。そんなアホな。
 いや怪獣なんだからそれくらい当然なのかな。現実感無いや。
 バランスを失った戦闘機はきりもみしながら地表に・・・僕のいるほうに落ちてきた。
 落ちてきた。

――え?死んじゃうよ

 逃げなきゃ、でも、足が動かない。
 まわりの人間が目に入った。全然慌てていない。みんな諦めたのか?
 でも、でもでも、カメラ構えているよ。みんな悠然としている。

 シュパーン

 破裂音がするとコクピットからシートごとパイロット?が射出された。
 いや、パイロットが助かっても、僕は助からないよ、きっと。
 墜落した戦闘機は完全に僕を狙っているみたいだ。
 気が遠くなってきた。ダメだ。
 気を失うと思った寸前、戦闘機はフっと消え去った。跡形もない。
 「はぁ?」
 僕はあまりのことに間抜けな声を出し、立ってられなくって、へたり込んでしまった。
 「助かったの?」
 膝をついたまま上を見上げるとパッとパラシュートが開くのが見えた。パイロットもとりあえず無事みたいだ。

――あれ、でもなんかヘンじゃない?

 戦闘機関係にはあんまり詳しくないんだけど、普通はパイロットの服ってグレーのつなぎとかな記憶がある。
 しかし、だ、上空からゆっくりと降りてくるのは、ピンク色の服を着た・・・女の子?
 他の若者たちはみんな浮かれているみたいで、黄色い歓声を上げている。
 なんだかアイドルに群がるオタクみたいだ。
 というか、今気がついた、アイドルオタクそのものだ。みんな気合いの入ったごついカメラを持っている。一眼レフのシャッターが連射される。
 パイロットの女の子は、なんと超ミニのスカートで、一生懸命両手で押さえているけど、それでもものすごく無理があった。ガーターベルトも見えたし、それと薄いブルーもだ。
 徐々に女の子の声が聞こえてきた。

 「きゃあああああぁってちょっと、お前ら邪魔ぁ、いやぁ、やぁんもー」
 そして女の子は僕のまん前にストンと着地して片膝を着いた。
 パラシュートを外しつつ顔を上げると、ちょうど僕と向かい合わせになる。
 正直こんなドキっとしたのは初めてだった。一瞬今の状況を忘れてしまう。
 バチっとした、ビビッドな顔立ち。ぱっと見ただけでえらい美少女だとわかる。
 女の子は銀の細淵フレームの眼鏡をかけていた。知的さよりもなんだか色気がプラスされている。

 「ん?何」
 問われたけど何も返せない。単に見とれていただけなんだから。
 「君、危ないよ、ここからちゃっちゃと逃げちゃって」
 「あ、はい」
 でも足が動かない。
 「ご、ごめんなさい、あの、あ、足が、震えて言うことを・・・」
 声がうわずってしまった。
 「動けないのね、ってええーちょっとぉ、動けないの?あーん困ったなぁ、どうすっかなぁ」
 パラシュートを完全に外した女の子はすっと立ち上がった。
 ボゥインとまたずいぶんとデカい胸が弾んだ。その割に細い腰。
 どうみてもパイロットの服装じゃない。ピンクのエプロンドレスというのかな。よくてウェイトレス。メイドとも違う。はっきり言って何かのコスプレに見える。
 アニメはそこそこ詳しいけど、これは知らない。
 ふとオタク兄さんたちの声が耳に入ってきた。
 「でたー魔法少女!」
 「待ってましたー」
 「魔女っ娘、ばんざーい」
 「神様仏様女神様ぁ」
 「oh!フジヤマゲイシャサメラーイハラキーリカイジューマホーショージョネー」
 「すいませーん写真いいですかぁ?」
 「目線こっちにお願いしまーす」

――まほう、しょうじょ?

 その女の子は何事か考えていたが、声援に気がついたのか、男性陣のほうを向くと、くるっとまわってからエプロンのすそを広げて見せた。
 フラッシュが多数瞬く。女の子は手を振って
 「ありがとう、ありがとうねー、と、さて、考えていても仕方ない」
 そして、上空のベレムナイトに目を向ける。
 怪獣はしばらくただ漂っていたが、また活動を再開した。マリオネットのように腕がくねくね動いている。

 ビガービガービガビガー

 破壊光線が光って地面のアスファルトを焼き焦がす。無軌道に飛んだ光はまた一つのビルを砕き、鉄筋をむき出しにする。
 「よし、やってみるか」
 魔法少女?はパラシュートのベルトについていた大きめのポシェットをあけると何かを取り出した。

――あれって・・・

 それは人気ロボットアニメ『超共神テスラガイン』の250分の1スケールプラモデル。
 まだ作っていないけど実は僕も持っている。
 それを少し離れたところに置くと少女はそれに向かって手をふった。
 「??」
 突如プラモがまばゆく光り始めた。とても目を開けていられない。
 しばらくして光がおさまったらしく僕が目を開くと・・・

 「え、えええええええええええええええええええええええええええええええ」
 僕の目の前には実物大、つまり全高40メートルの巨大ロボがそびえ立っていた。
 テスラガインは地球の磁場エネルギーを超電子ダイナモの技術を応用したメガテスラコイルによって吸収し稼働する・・・つまりそんな設定のスーパーロボットだ。
 ブルー系のカラーでまとめられたスマートな配色に対して、その重厚なデザイン……などと冷静に形容できるものではなかった。
 とにかくでかく、そして強そうだった。
 その時僕の頭に映像が瞬いた。
 ずっと前、休みの日にこっちへ遊びに来たことがあった。その日もやっぱり信じられないことに核ミサイルが東京に飛んできたんだ。いつか来るんじゃないかって言われてたけど、それが現実になった。
 東京まで出かけずに家に居ればよかったと後悔した。埼玉なら助かったかもしれないから。そんなことを思いつつぼーっと空を見上げていた。
 夕焼けはとても綺麗だった。いや、もう最後だから綺麗だと思えたのかもしれない。
 そしたらその赤い空をすごいスピードで飛んでいくものが見えたんだ。蒼い巨人。そう、今考えればテスラガインだった。それを見つけてから一時間かもっとか、その場に立ち尽くしていたんだけど、結局ミサイルは落ちてこなかった。
 僕は・・・僕らは助かったんだ。

 情けなく動けない僕をよそに少女が叫ぶ
 「テスラガイン、リフトオフ」
 するとテスラガインは駆動音とともにひざまずき、その巨大な手のひらを僕らの前に差し出した。
 「よし、そいじゃいこっか」
 「え?」
 「だって動けないんでしょ、そんなところにいたら死んじゃうかもしんないよ」
 「ええ?もしかして・・・」
 「乗せてあげよう。光栄に思いたまえよ」
 巨大な手のひらに載った少女は怯える僕の腕を引っ張る。逆らえず僕は手のひらに乗り、やはり座り込んでしまう。
 僕がしっかり座っているのを確認すると少女はロボに合図した。テスラガインは手を胸の位置に持って行く。
 それはアニメでもよく見るシーンだった。
 風が吹く中、少女は僕の前でロボの親指につかまりしっかりと立っている。
 大きなピンクのリボンにまとめられたポニーテールがなびく。
 はっ、と一瞬何か思いついたような仕草が後ろ姿に感じられると、少女は片手でミニスカートを抑える。フレアーがはためいていた。
 そんなこと気にする余裕は僕には無かったのだが、少女のガードによって逆に意識してまった。
 いよいよ手が胸のコクピットに迫る。
 少女は慣れているのか、若干の隙間も気にせずひょいと飛び移り、振り向く。
 「もうちょっとこっちきて」
 僕は無言でゆっくりと這った。少女が腕を伸ばし、またもや僕を引っ張る。
 「いーい?せーの・・・」
 僕はガクガクの足で飛び込もうとする。
 「って言ったら飛び移るんだよ」
 「うわぁぁって、ちょっとーこんな時に辞めてくださいよぉ」
 フェイントにひっかかりバランスを崩して手のひらの上でのびてしまった。
 さっきまで黙ってたはずの僕が、泣きそうになりながら大声で講義した。
 でも彼女は笑顔だった。
 「あ、ごめん、緊張をほぐそうとね・・・よかれと思って。はい、じゃ今度こそせーの」

 ビガビギャーン

 怪獣の破壊光線がかすめた。
 僕が目をつぶりかっこわるく飛び移った瞬間、ロボも大きく揺れた。
 コクピットの中に思いっきり倒れ込んでしまった。
 顔面を打つと思ったのにボンと弾んだ。エアバックに助けられたのか、不思議となんの痛みもなかった。
 上体を起こそうとエアバックを掴む。
 むにょっとして定まらないが、なんとか顔を上げた
 「重いーって、や、ぁん、ちょ、だめ、って、きゃああぁ」
 「え?」
 なんと僕は少女を押し倒して、そのエアバックのような胸を両手で掴んでいたのだった。
 びくっとして思わず手に力がはいる。
 「あん、ってお前殺すぞっ」
 言われると同時に蹴り飛ばされた。
 「うわぁぁああ」
 「えーんショックぅ、思いっきり胸もまれたぁ、あっ、やりすぎた」
 まだハッチを閉じてないコクピットルームから落っこちそうな僕を、もう一度ひっぱり入れると、ギューっとほっぺたをつねった。ものすごく痛い。
 「あんまりヤらしいことをしないように、わかった?」
 「事故、事故です、故意じゃないんです、同意の上じゃないけど、いやそうじゃなくって」
 動揺して何を言ってるのかわからなくなってしまった。
 「わーかったから。んじゃ君はどっかにつかまってじっとしていて」
 そういうと少女はコクピットルーム中央のシートに腰掛けてベルトをしめた。
 ベルトがその巨大な胸をさらに強調する。
僕はそのシートのパイプ部分を握りしめる。

――助かったぁ、って、やっぱこのロボットが怪獣と戦うんだよね

 僕はもう緊張なのか不安なのかわからなくなって、ぼうっとしてきた。ただただパイプを手に力をこめる。
 「うー、やっぱロボットは嫌いだなぁ、コクピットが狭いや、狭いの嫌なんだよね」
 なんかぼやいているみたいだ。
 「嫌だから早めに終わらせようか、テスラガインGO!」
 ズシンズシンという音が機体内に響く。ただ予想よりは揺れていない。
 モニターとサブレーダーに怪獣の姿が映る。
例の破壊光線が数条瞬く。びりびりとロボットが震える。
 「超電子バリアァ」
 少女の声に反応し、ロボットが左腕を前に出す。
 虚空に満月のような光の盾が現れた。
 直撃すると思われたビームが光の盾にはじかれた。衝撃もない。
 ビイイイという呻き声をあげると怪獣はその体色を鋼色に変化させた。
 貝殻から無数の棘が生えた。鬼の金棒のようだ。
 怪獣は独楽のように回りはじめ、徐々に回転数をあげてゆく。そして一度上昇したと思うと反転、砲弾のように飛び込んできた。
 テスラガインも構える。
 「さぁこい」
 少女は楽しそうにつぶやく。僕は思わずその顔を見つめる。
 受け止めるつもりだ。
 でも正直に言うと、ここから先はあまり戦闘について覚えていない。ずっと女の子を見つめていたからだ。この娘の視線に合わせてちょこちょこモニターを見ていただけだ。
 ドグワッッシャーンという巨大な音と激震が機体を襲う。
 「んっが」
 女の子がシートにたたきつけられる。ダオンと胸も弾ける。

――あーすごい迫力。あんなに揺れるんだな

 この時はもう何がなんだかわからなくなっていたみたいだ。僕の脳も揺れている。
 少女がずれたメガネを左手の中指でクイっとあげる。

――ポニーテールかぁ、普通の女の子ってしないよなぁ、漫画の中だけだよね。

――魔法少女だってさ、怪獣だってさロボットだってさ。

 怪獣はロボの両手によってがっしりと挟まれついに回転が止まった。ロボが自分の倍はある巨体を投げ飛ばし、地面に叩きつけ、粉塵を巻き上げた。
 「雷光剣プラズマ丸」
 テスラガインの腰にさしてあった、巨大な日本刀を抜き放つ。抜刀と同時に怪獣の腕を切り裂いた。ばらばらとまとめて10本ほど落ちた。
 刃を返して最上段に構える。刀身にプラズマエネルギーが走った。
 「ええいっ」
 気合い一閃、真っ向から切り下ろした。兜割りだ。
 怪獣の甲羅を半ば切り裂いた。
 ビイイイイイッン
 怪獣が再び吼えると空中に浮かび上がった。最後の力なのか、回転してビームをまき散らした。流れ弾が被害を増やす。
 「ちょっとぉ、そういうのやめてよ。んじゃぁ、これで止めだ、ガインメーザー」

――ガインメーザーか。アニメじゃ胸からパラボラアンテナが出るんだよね。でもここからじゃ見らんないや。

 だからこの魔法少女だけを見る。

――やっぱりすごく可愛いなぁ。ちょっと猫っぽい。

 女の子の頬が上気している。はぁはぁという息づかいが僕にも聞こえて、なんだか興奮した。
 こんな時にこんなことを考えるのは現実逃避なのかもしれない。
 少女はスコープに標的を重ねてタイミングを計り、そしてスイッチを入れた。
 テスラガインは地球からエネルギーを吸収するとパラボラアンテナから強力なマイクロ波光線を放った。
 コクピット内にも閃光が入り、反動でロボもズズズと後ろに下がる。
 怪獣をまるごと包み込むほどのビームは2秒ほどで終息し、目標は沈黙した。
 ビームは、大気をプラズマ化させながら空を突き抜けていった。
 雲が晴れていく。
 真っ黒く炭化した怪獣はそのままの形で墜落したが、地面にぶつかるとバラバラと崩れさり、風に流されてしまった。

――お、終わった・の?

 「あー勝った勝った。んじゃあ帰るかなぁ、それともどっか寄っていくかな、あーだめだもうバイトの時間だ」
 「え、バイト?」
 「あっと、忘れてた、君を降ろさなきゃ、動ける?」
 「え?あ、大丈夫・・・みたいです」
 まだ頭はぼうっとしているが、足はいつの間にか震えが治まっていた。
 今度は僕だけが巨大な手のひらに乗せられ地上に降ろされた。
 テスラガインがゆっくりと浮かび上がり、充分な安全な高度をとると、カキーンという音とともに一気に空の彼方へと消えてしまった。
 テスラガインが飛んでいった方向を見上げたまま僕は呆然と立ちつくしていた。

――ほんとになんだったんだろう

 とてもじゃないが15年生きてきてこんな体験はしたことがない。
 現実だったんだろうか。こういうのが白昼夢って言うんじゃないか?
 未だに信じられない。
 でも周りを見れば街は破壊されている。
 それにつねられた頬の痛みと手に残る弾力の記憶はしっかりと残っていた。
[番外編]--ピノキオ | permalink | comments(3) | trackbacks(0)

ピノキオ故障中!002

 豪快に破壊された駅前。電信柱も倒れているし、ガードレールもひしゃげている。
 コンクリートの固まりだってそこらに転がっている。
 けれど着実に修復されていく。
 ガッコンガッコンと工事の音が鳴り響く。穴の空いたアスファルトなんかはもうほとんどが埋まっている。早いね。
 被災地では現場工事用アンドロイドが多数稼動中。こいつらはゴーレムカンパニー製「ガテンRB1エコノミーモデル」だ。
 最近こういった大規模な工事や修復作業ではアンドロイドが使われることが多くなった。
 紫色の髪をしたおばちゃんたちが、べちゃべちゃしゃべりながら通り過ぎるけど、アンドロイドには興味ないみたい。
 だいぶ日常に溶け込んできたなぁと感じる。
 
 僕の父は小田切三十郎といって、アンドロイド工学の分野ではそれなりに有名な科学者だった。こういったアンドロイドの基本パーツやシステムの開発にも関わっていた。
 父がパテントを取っていれば今頃はとんでもない大金持ちになっていたんだと思う。
 でも父はそうしなかった。科学者のわりにはものぐさな人間だったので、お金がたくさんあったら仕事も研究もしなくなっただろう。
 たまたまそっちの方の才能があったのでそれで食べていただけ。
 ものぐさだから、お金があればもちろん仕事なんかしたくないんだろうだけど、働かなくなったらあっという間ににボケてしまいそうで、とにかくそれだけは嫌だったらしい。
 その辺は科学者らしいかもしれないね。
 そんなわけで開発したパテントは、ある程度のまとまった金額で売っちゃった。
 老後のためや僕の養育費で最低限必要な分だけ残して。それを管財人に管理させると、その後は会社所属のサラリーマン研究者として活動していたんだ。
 その父ももういないけど。
 ちょっとばかり体が弱かったので病気で死んでしまったんだね。
 一応の貯金はこんなときのための保険だったんだと思う。
 僕も普通に暮らしていく分には社会人になるまで問題ない・・・はず。ちょろまかされていなければ。まぁそうなったら仕方ないね。
 とりあえず父の生家が残されているから寝床にも困らない。だから別にいいかなぁと。
 父とは普通に仲がよかったんだけど、特別に感慨は沸かなかった。そういえば母もずいぶん前に死んでいるんだ・・・薄情ですか?
 
 僕の名前は小田切ベー太。兄弟もいないから、今いっしょにいるのはグリーンイグアナのエリザベス(♀)だけ。
 つい最近中学を卒業して、今は春休み。高校生になるのを待っている。
 今までは埼玉県に住んでいたけど、県内の高校には行かず、東京都下の白樺市に引っ越してきた。
 なんだか中学では愛想笑いをして過ごし、浮いていたというかみんなと距離をとっていたので、一から出直そうと離れたところにやってきた。
 それにこの町に父の家が残っている。家はそのままおいといて、今までは研究のため違うところに住んでいたんだ。
 春休みはまだ1週間あるからそれまでの間に引越しの荷物を整理したり、この町の散策をして慣れていこうと思っているところ。
 昨日も駅の周りを歩いていて、買い物をしてたらあの事件に遭遇したんだ。
 あのあとはもう疲れてへとへとだったんで、帰って速攻寝てしまいました。だから今日もう1回ちゃんと買い物をしようと思うのですよ。
 
 工事中の駅の中をすり抜け、初めて反対側へ出てみた。こっち側には小さな商店街があるみたいだ。こっちは僕が四月から通う学校とは逆方向。高校生らしき人はあまりいないね。ここで良さそうな青果店を探してみる。うちのイグアナのためにも美味しい野菜を探さなきゃだ。
 いくつもの店が並んでいる。文房具屋さんに雑貨屋さん、肉屋に魚屋、ゲームセンターとレンタルショップ、そして目当ての八百屋さん。いずれもこじんまりとしている。
 百円ショップや、本屋さんなんかをちょこちょこ覗きながら、ゆっくりと見てまわる。
 まぁわざわざ学校終わってから寄ることもない感じかな・・・おっと。
 模型店があった。看板には金づちとニッパー、そして弾丸のイラストがあって「ホビー&ミリタリーショップ・CRAFT弾」って書いてある。
 これは見ていかなきゃ。そうだ、ついでに作りかけのテスラガインのための塗料と足りないシンナーを買って行こう。
 自動じゃないドアを開けると妙に明るい店内。清潔感がある。店員さんだか店長さんだかは模型屋の親父というより喫茶店のマスターみたいで、シャンとしていてかっこいい。
 うん?ここは意外と広いなぁ。この商店街で一番広いんじゃないかなぁ。どうやら店の半分がプラモコーナーであとの半分はエアガンコーナーみたいだ。
 プラモやガレージキットフィギュアの作例がウインドゥに飾られている。エアガンコーナーには海外のレアなパーツも揃っている。
 この店はかなり出来るぞ!予想外の店だ。よほど名のある店とみた。
 なんだかうれしくなって模型材料と最近手に入れたエアガンの予備マガジン、そしてテスラガインのおまけ付き食玩を三個ポロポロと買ってしまった。こんなことでテンションが上がっちゃう自分。
 どれどれ、何が入ってるかなぁと気分良く店の外で確認・・・そして絶句。
 買った食玩には全部同じ物が入っていた。それは「光速宇宙旅客船さんめりぃ号」だった。テスラに出てくるメカの中では脇も脇。単なる宇宙旅行用の船で、正直10代の男の子が燃えるようなメカじゃない。ま、こんなもんだよねぇ、とほほ。
 若干テンションが下がりつつも、買った物をリュックに放り込み、さらに商店街を突き進む。どうやらこの時間はあまり買い物客もいないらしく、がらんとしている。大丈夫かいな。
 
――ふう、さすがにちょっと疲れてきたなぁ

 商店街も終わりに近づき、これから咲くであろう桜並木の通りが見える。やっぱり誰もいない。
 なんだかこういう雰囲気にドキドキする。おしゃれだけど、人がいない景色。異世界に迷い込んだ感じが僕のツボみたいだ。

――ん?なんだ、あの怪しい店

 並木の向こう側に何かがある。怪しいといってもおどろおどろしいというわけじゃない。
 なんだかあそこら辺だけトーンが違う。ここからでもはっきりわかるピンクのハートの看板。パステルカラーのなんというか、メルヘンハウスみたいな感じだ。まさかラブなホテルじゃぁないよね。それにしてはちいさすぎる・・・いや、知らないんだけど。
 喫茶店なのかなぁ。入ってみようかなぁ。お腹すいたし。なんとなく男の子お断りな感じが漂っているけど。そこはチャレンジ。
 そんなことを考えながらふらふらっと歩いていると、ひょいと木陰から人が出てきた。
 長いソバージュ?な髪型とロングスカートのワンピース、カーディガンみたいなのをはおっているたれ目気味の女性。お嬢様っぽい雰囲気。ふと気配を感じ後ろをちらっとみるとショートカットの意思強そうな顔。ジーンズとTシャツでいかにもスポーツ得意そうな感じ。二人とも僕よりちょっと背が高い。まぁ僕は161cmっきゃないんだけど。
 「よく聞いてちょうだい。これはビッグチャンスなのよ。さる大金持ちの男色家がいてね、その人が貴方の借金を肩代わりしてくれるというの」
 お嬢様っぽい人がいきなりわけわかんないことを言い出した?借金?だんしょくか?
 「あの突然何言い出したんですか?借金なんてないですよ。それに男色家ってなんなんですか?」
 「男色家というのはとても素敵な職業なのよ。小説家とか漫画家と同じで」
 「いや男色家の内容じゃなくって。それに絶対ウソだし。で、借金なんてないですから」
 「知っているわ、そのくらい。でもそういう設定のほうが燃えるものなの。大金持ちの美青年が多額の借金の代わりにあなたを召使として雇う・・・いやこの場合囲うというべきかしら。そしてあなたはことあるごとに破廉恥な行為を受けることになるわ。もちろんその魔の手から逃げ出したいんだけど、でもそれがいつの間にか忘れられなくなって、自ら彼の元に行くようになるの。そう…そうなるのよ。くぁー最高!あ、鼻血が」
 唖然、なんなんだろう一体。見た目は深窓の令嬢って感じで綺麗な人なのに・・・。
 「おい双葉何妄想ぶっこいてるんだよ。お前の趣味なんて聞いてねーよ。それよりあたしの好みはだなぁ、二人は部活の顧問と部員なんだ。例えば男子テニス部だったりしてな。それが指導に身が入りすぎてつい手がすべってしまい、秘めたる思いが爆発、そしてそのまま無理やりなだれ込んでしまうんだな。そういった強引なあやまちから始まるんだよ、最初は。で、初めは形だけだったのさ、でもそれが段々本当の愛へと変わっていくんだよ。あ、陸上部でもいいぞ。柔軟体操を手伝って背中を押したりしてな。で、やっぱ手が滑って勢い余って・・・うはたまらん、お、鼻血が鼻血がっ」
 お前の趣味も聞いてねーよって、こっちの人も変だ。完全に変だ。
 「あの、じゃあ僕はこの辺で・・・」
 「あら、そういうわけにはいかないのよ。いっしょにいきましょう」
 そういったお嬢様風の双葉?さんはポケットからスタンガンを取り出してバチバチ言わせ出した。後ろでは手錠を取り出してくるくる回している。
 まずい、これはまずい。拉致?
 「あ、あのちょっと手荒な事は・・・」
 「そうね、じゃあ、いうこと聞いてくれる?」
 鼓動が速くなる。ドキドキドキドキと音がはっきりと体全体に伝わる。
 ゆっくりと僕も双葉さんに近づいて、そして、ドンっと突き飛ばした。
 猛ダッシュ!

 「おーい双葉何やってんだよ」
 「いったーい。克美、ソレ絶対に逃がしちゃだめよ、追って」
 「ほい、まかせとけって、アレはあたしが」
――ったく、アレとかソレとか人を物みたいに、完全にド変態鬼畜野郎の発想だ・・・怖いよぉ。
 もう泣きそうだった。けどとにかく走る。後ろを確認すると、手の平をぴんとのばしてシュタンシュタンと軽快なスピードに乗って克美さんだかが迫ってくる。ものすごく速い。   
 受験の時期以降、まともな運動をしてない僕は思うように走れない。
 「ほいっと、捕まえ、た」
 克美さんの手錠が僕のリュックにかかる瞬間、僕はリュックを肩から外した。
 「ギャ」
 後ろでは悲鳴とともに派手に転がる音が聞こえたけど、もう振り返らない。小学生のころドロケイ(ケイドロ?)ではこの手を使ってよく逃げたんだ。
 あと20メートル、15、10、もっと速く動いてよ、僕の足。
 3メートル、1メートル。僕は手を伸ばして、何も考えずにドアを思いっきり開いた。
 カランとベルも鳴ったはずけど、グワラーンというドアの音にかき消された。もし壊れたらごめんなさい。
 「いらっしゃいませって、ちょっと何?」
[番外編]--ピノキオ | permalink | comments(4) | trackbacks(0)

ピノキオ故障中!003

 「すす、すいません、あの、えーとなんだけっけ、その」
 膝に手をついて前かがみの僕は上手く喋れない。はぁはぁと息が上がっている。
 「まぁちょっと落ちついて、ハイ、お水」
 目の前にすっと水の入ったコップが差し出された。カラっと氷が音を立てる。
 「あ、ありがとうござ・・・いま、す」
 顔をちょっとあげて受け取った僕の視線には、ドドーンと巨大なバストが飛び込んできた。この光景どこかで見覚えがある。さらに見上げるとあのバチっとした顔のメガネっ娘がうっすら笑っていた。ウェイトレスさん?えっと魔法少女?
 「・・・」
 「で、何があったんですか?」
 「あ、そうだ、えーと、ちょっとすいません」
 僕はとりあえずコップの水を一気に飲み干し、ふぅと息をついた。
 「そう、あれです、へん、変質者が現れたんですっ」
 「あら、変質者」
 「はい、なんか二人の女性に追っかけられて・・・」
 「二人の女性に追いかけられる?じゃあよかったじゃないですか」
 「いやそうじゃなくって、なんかこの二人が僕のことを捕まえて男色家のところに連れて行くとかなんとか」
 「あーそれは完全に変質者ね」
 「そうですよね、あ、そうだリュック」
 僕はドアを開けて恐る恐る外を見回した。そこにはもう二人組の姿は無く、リュックも消えていた。やつらが持って行ったみたいだ。
 おのれ変質者め、とほほ。
 「どう?まだいるの?」
 「いや、もういないみたいです。でもリュックを持っていかれちゃいました」
 「あらら、それはお気の毒に」
 「はぁ、まぁ仕方ないか。それはそうと、ちょうどここに入ろうと思っていたんです。あの、いいですか?」
 「え、もちろんどうぞ、うーん、じゃこっちの席がいいかな」
 通されたテーブル席に僕は座ると、メニューとお冷のおかわりを出された。
 「お決まりのころにまた来ますね」

 僕は開くとハート型になるメニューを見た。ハート○○という料理名が並んでいるが、なかなか頭に入ってこない。まだ混乱が完全には治まってはいないようだ。だからちゃんと落ち着くため、さりげない感じで周りの様子を見てみる。
 例のウェイトレスはカウンターの中に入っている。店内の内装は外から想像したとおり、ちょっと普通じゃなかった。とにかくいたるところがハートで構成されている。
 お客さんはというと、やっぱり女性がメインでカップルが一部なんだけど、4分の1くらい、ちょうど僕の席からこっちがなんとなくドス黒く、つまりカップルではない男性客が集められていて客層がはっきりと分けられていた。

――ん?なんだか視線を感じるぞ、ドス黒い方向から。
 
 いやもちろんあんな登場の仕方をしちゃったんだから当然といえば当然なんだけど。
 「あいつ…昨日のやつじゃないか」
 なんかひそひそと聞こえる。僕のことだと思うんだけど。なんか見たことあるような。
 あ、思いだした。男性客の何人かは昨日の大事件の現場にいたカメラ小僧だ。となるとやっぱりウェイトレスもそうだよなぁ。
 そう思っているとまた僕を混乱させる会話が耳に入ってきた。
 コーヒーを注ぎにきたあのウェイトレスに、
 「ア、アイチさん昨日の怪獣騒ぎ見ましたか?」
 「見たよー」
 え?見ましたかってどういうこと?完全に当事者だったじゃない。それにあの人、確かにあの場所にいたし。だってあの顔は見覚えあるし、服だって昨日と全く同じだ。
 「あの怪獣はゲゾバって言うんですよ」
 「知ってる『大凶獣ゲゾバ』でしょ。87年の怪獣映画だよね。私、映画館のオールナイトで観たもん」
 「ええ、観た事あるんですか。アイチさん凄いなぁ。で、どうでしたあの映画、あれは結構・・・」
 「どうでしたって、もちろん超つまんなかったですよぉ」
 「あ、あーそうですか・・・つまんなかったですか」
 「あの映画、映像はこだわっていたけど、でもそれだけなんだもん。なんだかんだ言って話はしょうもない怪獣映画レベルだったし。それに私は怪獣もの自体そんな興味ないし」
 「そう、ですか」
 わかんないなぁ、何故あんなにお互い知らないフリして会話しているんだろう。それとも別人なのか?
 僕が理解できないでいると、また別の人がよそよそしく話しかけた。
 「テスラガインはどうです?昨日はかっこよかったですよ」
 「あーそりゃ昨日のテスラはかっこよかったですよぉ。でも私、ロボットアニメってジャンルそのものには興味わかないんですよねぇ。怪獣とかロボットとか巨大なものに興味ないというか」
 「う、え、そうなんだ、興味ないんだ」
 だめだ、あの会話からじゃ本人なのか別人なのかわかんない。これはもう聞くしかない。そう思った時、隣の20代くらいの男性が僕に話しかけてきた。
 「お若ぇの、そうおめぇさんだ」
どういう喋り方なんだろう?何にあこがれているんだ。
 「おめぇさん、昨日アイチさんといっしょにテスラに乗り込んだ人だろ」
 あ、あの人はアイチさんっていうのか。
 「はいそうです。やっぱりあの人は昨日の人ですよね」
 「おめぇさん見かけねぇつらだけど初顔かい?」
 「え?あ、はい。初顔っていうか、最近引っ越してきてこの辺を散策しているんです。そしたら昨日あんなことがあって」
 「ああそうかい。でもよ、一応言っておくが余計な事を言っちゃいけねーぜ」
 「なんでですか?」
 「なんたってアイチさんは俺たちの、いやこの街だけのアイドルだからな。おっと」
 アイチさんはカウンターに戻ると、のびをしている。そして肩を回すとぐぅっと後ろに反らして胸を張る。さらに首を回し、メガネを外すと眉間を揉んだ。
 可愛い!
 「アイチさん・・・いいねぇ」
 確かに。心の中で男性に同調した。
 メガネをかけなおしたアイチさんは僕のところに向かってきた。
 「お決まりですか?」
 いけない、急いでメニューから選ぶ。
 「えぇっとハートチーズバーガーとブレンドで」
 「チーズバーガーのつけ合せはポテトフライとポテトサラダのどちらになさいますか?」
 「じゃあポテトフライでお願いします」
 「はい、ブレンドはお替り自由ですのでお気軽にどーぞ」
 アイチさんはメモを取りおわるとメニューをさげようとした。その時僕は思わず呻いてしまった。
 「うっ」
 「ん?まだメニュー見ます?置いておきましょうか?」
 「あ、いや大丈夫です」
 メニューを取ろうと前かがみになったアイチさんのブラウスが目に入った。元々セクシーなデザインで、胸元もちょっと、いや結構開いていて、谷間が見えちゃってるんだけど、ブラウスを留めていたボタンが一つ無くなっていたんだ。
 だから隙間が開いちゃってて、中の・・・青いブラが見えてしまった。
 あのときだ、さっきストレッチをして胸を張ったとき、ボタンが飛んじゃったんだ。そりゃそうだよ、今にもはちきれそうだったんだから。
 うう、ちょっと、こりゃダメだよ。
 そんな僕のピンク思考には気がつかず、アイチさんはカウンター奥へと消えていった。
[番外編]--ピノキオ | permalink | comments(6) | trackbacks(0)

ピノキオ故障中!004

 水を何度か飲んで気を取り直し、僕は男に尋ねた。
「あのそれでなんでみなさん知らないフリをしているんでしたっけ」
「だってよ・・・なんつうか、その話題触れにくいじゃねーか」
「それはそうだよね」
 あいづちを打つように、反対側から理系学生って感じのひょろい青年が口を挟んできた。僕もそっちを見返して尋ねる。
「え、なんでですか?」
「いくつかあるけど、一番の理由は、あの娘さ・・・すっごく可愛いだろ、な、可愛いだろっ」
「ええ、は、はいもちろん」
 冷静な口調から、急にテンションの上がった若者の勢いに押されてしまった。ちょっと驚いた。
「下手に話題になって有名になったらさ、色んなところにどんどん情報が広がって、すぐにでも芸能関係のスカウト来ちゃうんじゃないかなぁと」
 まぁ、あのルックスじゃ魔法とか関係なくてもありえる。
「そういうこった。そしたら俺らなんてもうぜぇぇぇぇぇぇったい相手してくんねーだろ。近づいただけで射殺されちまうってもんよ」
「射殺はされないでしょ」
「いや、僕なら間違いなくするね。半径十メートル以内に入ったら・・・殺す」
 架空の話なのに青年の目は本気になっていた。
「今ならまだなんとか近くにいられるだろ。とりあえず金さえ払ってればよ」
 こっちのお兄さんの発想は完全にキャバクラだ。
「それからさ、彼女はあんなことが出来るわけさ。それでアイチさんの能力が公になったら国が規制してしまうかもしれないだろ。エアガンだって規制されるんだから、魔法なんて絶対だよ」
 それはあるかもしれない。有害な位置づけとはいえ、所詮単なるおもちゃだったエアガンに今ではある程度の法規制がされている。しかし、何故あの力が話題にならないんだろう。
「世の中には知られて無いんですか?確かに僕も昨日まで知らなかったですけど」
「いや、もちろん、完璧じゃないしある程度知られているんだけど・・なんというかファンクラブ的な組織があって、まぁ組織って言っても僕ら有志一同なんだけど、それで話題の拡散を阻止したり、逆に誤情報を流して撹乱させてうさんくさくなるようにしているんだ。都市伝説にもならない感じで。結構みんなそれなりに知識とか実力ある人だからね」
 なるほど、そういう力が働いているのか。これでひとつの回答は出たけどさらに僕は疑問をぶつける。
「本人にはどうなんですか?」
 なんだかんだ言ってもあれだけ話しかけたらまずいんじゃないのかな。
「本当はよ、もちろんアイチさんとそのことについて話してーよ。でもよ出来ねーだろそんなこと」
「そんなことは無いでしょう」
「そうもいかねーんだって。ま、でもな、やっぱ話したいんだよ。そこでなんとかそのことを匂わせつつ話題をふって仲良くなれば、もしかして向こうから『あなただけに教えちゃいます、わたしのヒ・ミ・ツ!』みたいなことにならんかなぁと思っちゃってるわけよ」
 でた、また妄想だよ。わかるっちゃぁわかるけど。とはいえ、そう都合よくはいかないでしょ。
「でももしそんな二人だけで秘密を共有する仲になればよぉ、魔法がばれて規制されちゃってもいいかなぁって。だってよ、ふたりはすでにそういう関係なんだから、魔法なんてどうでもよくなってるわなぁ」
「君、それは邪道だよ。我々はこの世に本当に誕生した魔法少女という存在を純粋に楽しみ、慈しむべきなんじゃないのか」
「・・・そうはいうけど、アレみろよ、あの顔とスタイル。純粋にっていうけどよぉ、魔法が使えるブサイクと使えない美少女だったらお前どっち選ぶんだよ」
 この質問に学生風の人は腕組みをして悩みだした。確かに難しい問題だと思う。いわば自分自身の信念を試されているようなものだし。いや別に僕は魔法少女に信念があるわけじゃないけど。
「な、難しいだろ、だからとりあえずおいておいてそのまんまということでいいだろ」
「そうだね、今のところはそれしか無いな」
 なんて生産性の無い会話なんだろう。でもとりあえず今は次の疑問だ。聞きたいことはたくさんある。わからないことはどんどん知りたい。
「とにかく本人には聞かないとして、で、一体何者なんですか?」
「・・・魔法少女かな、やっぱり」
「いや、そうじゃなくって、どこからきたとか、何故あんな力が使えるのか、とかとか」
「いやー実は我々もまったく知らないんだよねー」
 僕は一瞬言葉を失った。そうなんだ、何も知らないんだ。
「この喫茶店自体は結構前からあったよ。んであの子は白樺高等学校の高校生で、アルバイト。まぁここが彼女の家なんだけど」
 お、白樺高校の生徒なんだ。春休みが明けたら僕の先輩になると思うと、それはそれでちょっとテンションがあがる。
「なんだろうねえ、ちょっと前から不思議なことがおきていたんだよ。そしてしばらくしてから彼女の活躍も目撃されるようになってきたんだ。ただみんな信じなかったけどね。それが逆に我々には都合がよかった。いち早く確信した僕たちが情報を守れたからね。ただ僕らが知らないずっと前からすでに活動していたのかもしれない」
「例えばどんなことがあったんですか?」
「うーん僕らが知っているところでは謎の邪教集団と戦っていたとか、あ、そうそうアレ知らないかな、怪盗キラメキ十三世の話。あ、田所さん、話してあげてくださいよ」
 今度は若者に声をかけられて、離れた席からがっちりとした体格の中年男性がやってきた。この人も知り合いみたいだ。それなのにみんなバラバラに座ってるんだなぁ。一人客として来てるのか。
 ちなみに怪盗キラメキ十三世の話はニュースでちょっと見た程度しか知らない。キラメキ十三世は世界を舞台に活動する超大物下着泥棒で、それまで盗みを失敗したことがなかったらしい。そのキラメキ十三世が二ヶ月前、日本に現れるという予告状を送ってきたのだ。獲物は年商三億のカリスマ主婦安藤小枝子さん(三十二)の高級ブラジャーだった。
「おれは警視庁の刑事部長で、あの事件の陣頭指揮を執っていたんだ。で、その時どうやらアイチさんもキラメキの野郎を追っていたらしいんだな」
「え、刑事さんなんですか?今日はお休みですか」
「ん、いや今は昼休みだ」
「昼休みって・・・どこから来てるんですか?ここから警視庁って遠くないですか」
「え、まぁそれはいいじゃないか。で、野郎は俺たちの警備体制もさることながら、安藤さんの家に出前に来たふりをして入り込んでいたアイチさんのおかげもあって、ホシを追い詰めたんだな。だが、ふと見るとアイチさんからブラをするっと抜いたんだ。あのでっかいのをだぞ。むしろそっちのほうが魔法だったぜ。それでその隙に本当の目標を奪いやがったのさ。そして用意してあった気球で逃げ去るキラメキだったけど、俺たちはどうしようもなかったさ。でもやっぱアイチさんは違うなぁ。すぐさまヘリコプターで追いかけて気球を捕まえたんだ。特殊なヘリらしく、機体からマジックアームが伸びてがっちりとな。だが、キラメキのやつもやるもんで、煙幕をはってさっと逃げちまったんだなぁ。『今日は君たちのチームワークと友情に敬意を表してこれで去るであるよ、あでぃおーす』とか気障なこと言ってよ。でも盗んだブラはなんとか回収できたんだ。捕まえることは出来なかったが、初めてやつの犯罪を防いだということで俺たちも鼻高々よ。今まで世界中の腕っこきがやつにしてやられてからなぁ。アイチさんの存在は上の方には言わなかったからとりあえずばれてないと思う。それにアイチさんのブラは証拠品としてちゃんとオレが保管してるんだ」
 まるで自分の手柄のようにペラペラ喋っていたが、最後になんかとんでもないことを言い出した。
「えええ、なんで刑事さんが保管してるんですか、それじゃ変態じゃないですか」
「おおお、お前何馬鹿なこと言ってんだ。俺が保管するのが一番安全なんだよ。それにちゃんと他の人のは鑑識に回している。だから全然やましくなんか無いんだよ」
 しまった、という顔をした刑事さんが反論するが意味を成していない。聖職者のモラル低下はこんなところでも確実にすすんでいるみたいだ。
「田所さーん、ちょっと良いですか。今の話は初めて聞きましたよ」
 驚愕の行為を耳にしたほかの男性客たちは席を離れ、店員に見えないところに変態刑事を連れて行くとぼこぼこにし始めた。戻ってきたときには刑事さんの顔の形はだいぶ変わっていた。

「あれは覚えてんだろ。前に某国だかマッドサイエンティストだかが日本に核ミサイル撃ったことあったよな、日本に一発。あれを阻止したのもアイチさんじゃないかって」
 もちろん知っている。そのミサイルの詳細は一切が不明で、ただ飛来してきていることだけがニュース速報になり、大混乱になった。そんなことがあっても、結局平和になってしまえば、今ではそのことを口にするものもいないし、実際僕も昨日まで忘れていた。それはそうかもしれない。発射されたって言われたけど、それが何がなんだかわからないうちに消失したんだから。今のなんだったの?って感じだ。
「あの時もテスラガインが飛んでいたのを見たってやつもいるんだ。まぁほんとかどうかわからんけどよ」
「それは僕も見ました」
「ほんとか、そうかぁ、ほんとだったか」
 確かにテスラガインならミサイルも止められるのかもしれない。それ以前にそのミサイルはなんだったんだろう。昨日の怪獣といい、そういったことが僕の知らないところで頻繁に起こっているんだろうか。
「他にもいくつかあるけどよ、最近ので一番でかいやつっていったら、やっぱあの戦車のあれだな。おっと」
「え?なんです」
 僕が聞き返すも間もなくみんな自分の席に戻っていった。気がつくとカウンターに差し出された大きなハート型の皿をアイチさんが受け取っていた。 それはハンバーガーのようで、きっと僕のだ。
「はいっハートチーズバーガーとブレンドお待たせしました。ご注文以上でよろしいですか」
 僕はだまって頷いた。
「伝票失礼しまーす。ではどうぞごゆっくり。あ。ブレンドはお替り自由です」
 そういうとペコっと一礼をしてくれた。もちろんこの時も僕の位置からはブラウスの中がちらちら見えていて、ドギマギした。そんなことが気付かれてないか不安だったが、アイチさんはそのままカウンターに戻っていった。
「それじゃあ休憩に行ってきまーすっと」
 アイチさんは厨房や他のウェイトレスに声をかけるとバックヤードに続く廊下へと向った。
 廊下の入り口には姿見サイズの鏡があって、アイチさんはふとそれに目を向けた。
一瞬目を細めると眼鏡を直し、もう一度鏡を見た。
「あ、っつぁ」
 変な声をあげるとブラウスに手をあて、そしてキっとこっちを見た。
 もちろん僕はアイチさんを見ていたので、目が合ってしまい、反射的に目をそらしてしまった。
――しまったぁ
こんなときは何もわかってないようなふりして会釈でもしとかなきゃいけないのに、これじゃ完全に「見てました」って言っているようなもんだ。
 そしてアイチさんはツーンといった感じで向こうをむくと、店の奥に消えていった。
 ちょっとつらい。
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