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ピノキオ故障中!002

 豪快に破壊された駅前。電信柱も倒れているし、ガードレールもひしゃげている。
 コンクリートの固まりだってそこらに転がっている。
 けれど着実に修復されていく。
 ガッコンガッコンと工事の音が鳴り響く。穴の空いたアスファルトなんかはもうほとんどが埋まっている。早いね。
 被災地では現場工事用アンドロイドが多数稼動中。こいつらはゴーレムカンパニー製「ガテンRB1エコノミーモデル」だ。
 最近こういった大規模な工事や修復作業ではアンドロイドが使われることが多くなった。
 紫色の髪をしたおばちゃんたちが、べちゃべちゃしゃべりながら通り過ぎるけど、アンドロイドには興味ないみたい。
 だいぶ日常に溶け込んできたなぁと感じる。
 
 僕の父は小田切三十郎といって、アンドロイド工学の分野ではそれなりに有名な科学者だった。こういったアンドロイドの基本パーツやシステムの開発にも関わっていた。
 父がパテントを取っていれば今頃はとんでもない大金持ちになっていたんだと思う。
 でも父はそうしなかった。科学者のわりにはものぐさな人間だったので、お金がたくさんあったら仕事も研究もしなくなっただろう。
 たまたまそっちの方の才能があったのでそれで食べていただけ。
 ものぐさだから、お金があればもちろん仕事なんかしたくないんだろうだけど、働かなくなったらあっという間ににボケてしまいそうで、とにかくそれだけは嫌だったらしい。
 その辺は科学者らしいかもしれないね。
 そんなわけで開発したパテントは、ある程度のまとまった金額で売っちゃった。
 老後のためや僕の養育費で最低限必要な分だけ残して。それを管財人に管理させると、その後は会社所属のサラリーマン研究者として活動していたんだ。
 その父ももういないけど。
 ちょっとばかり体が弱かったので病気で死んでしまったんだね。
 一応の貯金はこんなときのための保険だったんだと思う。
 僕も普通に暮らしていく分には社会人になるまで問題ない・・・はず。ちょろまかされていなければ。まぁそうなったら仕方ないね。
 とりあえず父の生家が残されているから寝床にも困らない。だから別にいいかなぁと。
 父とは普通に仲がよかったんだけど、特別に感慨は沸かなかった。そういえば母もずいぶん前に死んでいるんだ・・・薄情ですか?
 
 僕の名前は小田切ベー太。兄弟もいないから、今いっしょにいるのはグリーンイグアナのエリザベス(♀)だけ。
 つい最近中学を卒業して、今は春休み。高校生になるのを待っている。
 今までは埼玉県に住んでいたけど、県内の高校には行かず、東京都下の白樺市に引っ越してきた。
 なんだか中学では愛想笑いをして過ごし、浮いていたというかみんなと距離をとっていたので、一から出直そうと離れたところにやってきた。
 それにこの町に父の家が残っている。家はそのままおいといて、今までは研究のため違うところに住んでいたんだ。
 春休みはまだ1週間あるからそれまでの間に引越しの荷物を整理したり、この町の散策をして慣れていこうと思っているところ。
 昨日も駅の周りを歩いていて、買い物をしてたらあの事件に遭遇したんだ。
 あのあとはもう疲れてへとへとだったんで、帰って速攻寝てしまいました。だから今日もう1回ちゃんと買い物をしようと思うのですよ。
 
 工事中の駅の中をすり抜け、初めて反対側へ出てみた。こっち側には小さな商店街があるみたいだ。こっちは僕が四月から通う学校とは逆方向。高校生らしき人はあまりいないね。ここで良さそうな青果店を探してみる。うちのイグアナのためにも美味しい野菜を探さなきゃだ。
 いくつもの店が並んでいる。文房具屋さんに雑貨屋さん、肉屋に魚屋、ゲームセンターとレンタルショップ、そして目当ての八百屋さん。いずれもこじんまりとしている。
 百円ショップや、本屋さんなんかをちょこちょこ覗きながら、ゆっくりと見てまわる。
 まぁわざわざ学校終わってから寄ることもない感じかな・・・おっと。
 模型店があった。看板には金づちとニッパー、そして弾丸のイラストがあって「ホビー&ミリタリーショップ・CRAFT弾」って書いてある。
 これは見ていかなきゃ。そうだ、ついでに作りかけのテスラガインのための塗料と足りないシンナーを買って行こう。
 自動じゃないドアを開けると妙に明るい店内。清潔感がある。店員さんだか店長さんだかは模型屋の親父というより喫茶店のマスターみたいで、シャンとしていてかっこいい。
 うん?ここは意外と広いなぁ。この商店街で一番広いんじゃないかなぁ。どうやら店の半分がプラモコーナーであとの半分はエアガンコーナーみたいだ。
 プラモやガレージキットフィギュアの作例がウインドゥに飾られている。エアガンコーナーには海外のレアなパーツも揃っている。
 この店はかなり出来るぞ!予想外の店だ。よほど名のある店とみた。
 なんだかうれしくなって模型材料と最近手に入れたエアガンの予備マガジン、そしてテスラガインのおまけ付き食玩を三個ポロポロと買ってしまった。こんなことでテンションが上がっちゃう自分。
 どれどれ、何が入ってるかなぁと気分良く店の外で確認・・・そして絶句。
 買った食玩には全部同じ物が入っていた。それは「光速宇宙旅客船さんめりぃ号」だった。テスラに出てくるメカの中では脇も脇。単なる宇宙旅行用の船で、正直10代の男の子が燃えるようなメカじゃない。ま、こんなもんだよねぇ、とほほ。
 若干テンションが下がりつつも、買った物をリュックに放り込み、さらに商店街を突き進む。どうやらこの時間はあまり買い物客もいないらしく、がらんとしている。大丈夫かいな。
 
――ふう、さすがにちょっと疲れてきたなぁ

 商店街も終わりに近づき、これから咲くであろう桜並木の通りが見える。やっぱり誰もいない。
 なんだかこういう雰囲気にドキドキする。おしゃれだけど、人がいない景色。異世界に迷い込んだ感じが僕のツボみたいだ。

――ん?なんだ、あの怪しい店

 並木の向こう側に何かがある。怪しいといってもおどろおどろしいというわけじゃない。
 なんだかあそこら辺だけトーンが違う。ここからでもはっきりわかるピンクのハートの看板。パステルカラーのなんというか、メルヘンハウスみたいな感じだ。まさかラブなホテルじゃぁないよね。それにしてはちいさすぎる・・・いや、知らないんだけど。
 喫茶店なのかなぁ。入ってみようかなぁ。お腹すいたし。なんとなく男の子お断りな感じが漂っているけど。そこはチャレンジ。
 そんなことを考えながらふらふらっと歩いていると、ひょいと木陰から人が出てきた。
 長いソバージュ?な髪型とロングスカートのワンピース、カーディガンみたいなのをはおっているたれ目気味の女性。お嬢様っぽい雰囲気。ふと気配を感じ後ろをちらっとみるとショートカットの意思強そうな顔。ジーンズとTシャツでいかにもスポーツ得意そうな感じ。二人とも僕よりちょっと背が高い。まぁ僕は161cmっきゃないんだけど。
 「よく聞いてちょうだい。これはビッグチャンスなのよ。さる大金持ちの男色家がいてね、その人が貴方の借金を肩代わりしてくれるというの」
 お嬢様っぽい人がいきなりわけわかんないことを言い出した?借金?だんしょくか?
 「あの突然何言い出したんですか?借金なんてないですよ。それに男色家ってなんなんですか?」
 「男色家というのはとても素敵な職業なのよ。小説家とか漫画家と同じで」
 「いや男色家の内容じゃなくって。それに絶対ウソだし。で、借金なんてないですから」
 「知っているわ、そのくらい。でもそういう設定のほうが燃えるものなの。大金持ちの美青年が多額の借金の代わりにあなたを召使として雇う・・・いやこの場合囲うというべきかしら。そしてあなたはことあるごとに破廉恥な行為を受けることになるわ。もちろんその魔の手から逃げ出したいんだけど、でもそれがいつの間にか忘れられなくなって、自ら彼の元に行くようになるの。そう…そうなるのよ。くぁー最高!あ、鼻血が」
 唖然、なんなんだろう一体。見た目は深窓の令嬢って感じで綺麗な人なのに・・・。
 「おい双葉何妄想ぶっこいてるんだよ。お前の趣味なんて聞いてねーよ。それよりあたしの好みはだなぁ、二人は部活の顧問と部員なんだ。例えば男子テニス部だったりしてな。それが指導に身が入りすぎてつい手がすべってしまい、秘めたる思いが爆発、そしてそのまま無理やりなだれ込んでしまうんだな。そういった強引なあやまちから始まるんだよ、最初は。で、初めは形だけだったのさ、でもそれが段々本当の愛へと変わっていくんだよ。あ、陸上部でもいいぞ。柔軟体操を手伝って背中を押したりしてな。で、やっぱ手が滑って勢い余って・・・うはたまらん、お、鼻血が鼻血がっ」
 お前の趣味も聞いてねーよって、こっちの人も変だ。完全に変だ。
 「あの、じゃあ僕はこの辺で・・・」
 「あら、そういうわけにはいかないのよ。いっしょにいきましょう」
 そういったお嬢様風の双葉?さんはポケットからスタンガンを取り出してバチバチ言わせ出した。後ろでは手錠を取り出してくるくる回している。
 まずい、これはまずい。拉致?
 「あ、あのちょっと手荒な事は・・・」
 「そうね、じゃあ、いうこと聞いてくれる?」
 鼓動が速くなる。ドキドキドキドキと音がはっきりと体全体に伝わる。
 ゆっくりと僕も双葉さんに近づいて、そして、ドンっと突き飛ばした。
 猛ダッシュ!

 「おーい双葉何やってんだよ」
 「いったーい。克美、ソレ絶対に逃がしちゃだめよ、追って」
 「ほい、まかせとけって、アレはあたしが」
――ったく、アレとかソレとか人を物みたいに、完全にド変態鬼畜野郎の発想だ・・・怖いよぉ。
 もう泣きそうだった。けどとにかく走る。後ろを確認すると、手の平をぴんとのばしてシュタンシュタンと軽快なスピードに乗って克美さんだかが迫ってくる。ものすごく速い。   
 受験の時期以降、まともな運動をしてない僕は思うように走れない。
 「ほいっと、捕まえ、た」
 克美さんの手錠が僕のリュックにかかる瞬間、僕はリュックを肩から外した。
 「ギャ」
 後ろでは悲鳴とともに派手に転がる音が聞こえたけど、もう振り返らない。小学生のころドロケイ(ケイドロ?)ではこの手を使ってよく逃げたんだ。
 あと20メートル、15、10、もっと速く動いてよ、僕の足。
 3メートル、1メートル。僕は手を伸ばして、何も考えずにドアを思いっきり開いた。
 カランとベルも鳴ったはずけど、グワラーンというドアの音にかき消された。もし壊れたらごめんなさい。
 「いらっしゃいませって、ちょっと何?」
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[番外編]--ピノキオ | permalink | comments(4) | trackbacks(0)

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この記事に対するコメント

春日さんこんばんは
いつもお世話になっています。
アンドロイドが人間の労働者の仕事を取りやがった! 俺達の方が安く雇えるのに! それにすぐに呑んで使うから経済が回転するのに!
もしかしてべー太の父親は誰かしらの恨みを買っていたのかもしれませんね。
まあいいですね……

さて、このシリーズは春日さんの個人創作ということで、春日さんの思い出と妄想をフィルターを通さないで読んでいるようでドキドキしてしまいます。
謎の二人女も完璧に春日さんの好みだし……。こういう、第三者がいるのに自分達だけで隠語とかバンバン使ってトークする人いますよね。たいがい漫画かゲームの台詞をトークの中で真似したりするんですよね。

それにしてもべー太、リュックをあっさり切り離すとは、よっぽど怖かったんでしょうね。もしくは物に執着しないタイプかもしれません。父親もそのようですしね。
次話はついにあのキャラが!
アヴダビ | 2006/03/02 7:07 PM
そうなんですよ。
人間の方が安いよなぁと思っているんですが、まぁアンドロイドはぶっ通しで働けるということで大規模工事では採用されているという状況です。
ちなみにあの二人はまったく好みではありません。
イヤです。
ベー太はあんまり物に執着しません。
つうか主人公の性格を書き分けてないだけかもしれませんが。
次回はやっとヒロイン登場です。
次回がいつかは不明ですが。
春日 | 2006/03/02 9:21 PM
それにしても書くのが遅い。
春日はちょっと違って、「小説を書くのが好き」で小説を書いているわけではないのです。
「現実問題として小説以外作れない」から小説なわけです。
お金持ちであればアニメか実写で作っている可能性が高いです。
小説を書くこと自体が好きであれば勢いで書けるのでしょうが、そうではないため時間がかかります。
「小説を書くんだ」ということを自覚しないと書けません。
ただ、逆に書きなおし全く苦になりません。
この回も同じ内容で3回くらい書きなおしています。
春日 | 2006/03/03 1:55 AM
諸般の事情で2話に加筆。
気が付かなければそのままで。
春日 | 2006/03/05 3:59 AM
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