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ピノキオ故障中!003

 「すす、すいません、あの、えーとなんだけっけ、その」
 膝に手をついて前かがみの僕は上手く喋れない。はぁはぁと息が上がっている。
 「まぁちょっと落ちついて、ハイ、お水」
 目の前にすっと水の入ったコップが差し出された。カラっと氷が音を立てる。
 「あ、ありがとうござ・・・いま、す」
 顔をちょっとあげて受け取った僕の視線には、ドドーンと巨大なバストが飛び込んできた。この光景どこかで見覚えがある。さらに見上げるとあのバチっとした顔のメガネっ娘がうっすら笑っていた。ウェイトレスさん?えっと魔法少女?
 「・・・」
 「で、何があったんですか?」
 「あ、そうだ、えーと、ちょっとすいません」
 僕はとりあえずコップの水を一気に飲み干し、ふぅと息をついた。
 「そう、あれです、へん、変質者が現れたんですっ」
 「あら、変質者」
 「はい、なんか二人の女性に追っかけられて・・・」
 「二人の女性に追いかけられる?じゃあよかったじゃないですか」
 「いやそうじゃなくって、なんかこの二人が僕のことを捕まえて男色家のところに連れて行くとかなんとか」
 「あーそれは完全に変質者ね」
 「そうですよね、あ、そうだリュック」
 僕はドアを開けて恐る恐る外を見回した。そこにはもう二人組の姿は無く、リュックも消えていた。やつらが持って行ったみたいだ。
 おのれ変質者め、とほほ。
 「どう?まだいるの?」
 「いや、もういないみたいです。でもリュックを持っていかれちゃいました」
 「あらら、それはお気の毒に」
 「はぁ、まぁ仕方ないか。それはそうと、ちょうどここに入ろうと思っていたんです。あの、いいですか?」
 「え、もちろんどうぞ、うーん、じゃこっちの席がいいかな」
 通されたテーブル席に僕は座ると、メニューとお冷のおかわりを出された。
 「お決まりのころにまた来ますね」

 僕は開くとハート型になるメニューを見た。ハート○○という料理名が並んでいるが、なかなか頭に入ってこない。まだ混乱が完全には治まってはいないようだ。だからちゃんと落ち着くため、さりげない感じで周りの様子を見てみる。
 例のウェイトレスはカウンターの中に入っている。店内の内装は外から想像したとおり、ちょっと普通じゃなかった。とにかくいたるところがハートで構成されている。
 お客さんはというと、やっぱり女性がメインでカップルが一部なんだけど、4分の1くらい、ちょうど僕の席からこっちがなんとなくドス黒く、つまりカップルではない男性客が集められていて客層がはっきりと分けられていた。

――ん?なんだか視線を感じるぞ、ドス黒い方向から。
 
 いやもちろんあんな登場の仕方をしちゃったんだから当然といえば当然なんだけど。
 「あいつ…昨日のやつじゃないか」
 なんかひそひそと聞こえる。僕のことだと思うんだけど。なんか見たことあるような。
 あ、思いだした。男性客の何人かは昨日の大事件の現場にいたカメラ小僧だ。となるとやっぱりウェイトレスもそうだよなぁ。
 そう思っているとまた僕を混乱させる会話が耳に入ってきた。
 コーヒーを注ぎにきたあのウェイトレスに、
 「ア、アイチさん昨日の怪獣騒ぎ見ましたか?」
 「見たよー」
 え?見ましたかってどういうこと?完全に当事者だったじゃない。それにあの人、確かにあの場所にいたし。だってあの顔は見覚えあるし、服だって昨日と全く同じだ。
 「あの怪獣はゲゾバって言うんですよ」
 「知ってる『大凶獣ゲゾバ』でしょ。87年の怪獣映画だよね。私、映画館のオールナイトで観たもん」
 「ええ、観た事あるんですか。アイチさん凄いなぁ。で、どうでしたあの映画、あれは結構・・・」
 「どうでしたって、もちろん超つまんなかったですよぉ」
 「あ、あーそうですか・・・つまんなかったですか」
 「あの映画、映像はこだわっていたけど、でもそれだけなんだもん。なんだかんだ言って話はしょうもない怪獣映画レベルだったし。それに私は怪獣もの自体そんな興味ないし」
 「そう、ですか」
 わかんないなぁ、何故あんなにお互い知らないフリして会話しているんだろう。それとも別人なのか?
 僕が理解できないでいると、また別の人がよそよそしく話しかけた。
 「テスラガインはどうです?昨日はかっこよかったですよ」
 「あーそりゃ昨日のテスラはかっこよかったですよぉ。でも私、ロボットアニメってジャンルそのものには興味わかないんですよねぇ。怪獣とかロボットとか巨大なものに興味ないというか」
 「う、え、そうなんだ、興味ないんだ」
 だめだ、あの会話からじゃ本人なのか別人なのかわかんない。これはもう聞くしかない。そう思った時、隣の20代くらいの男性が僕に話しかけてきた。
 「お若ぇの、そうおめぇさんだ」
どういう喋り方なんだろう?何にあこがれているんだ。
 「おめぇさん、昨日アイチさんといっしょにテスラに乗り込んだ人だろ」
 あ、あの人はアイチさんっていうのか。
 「はいそうです。やっぱりあの人は昨日の人ですよね」
 「おめぇさん見かけねぇつらだけど初顔かい?」
 「え?あ、はい。初顔っていうか、最近引っ越してきてこの辺を散策しているんです。そしたら昨日あんなことがあって」
 「ああそうかい。でもよ、一応言っておくが余計な事を言っちゃいけねーぜ」
 「なんでですか?」
 「なんたってアイチさんは俺たちの、いやこの街だけのアイドルだからな。おっと」
 アイチさんはカウンターに戻ると、のびをしている。そして肩を回すとぐぅっと後ろに反らして胸を張る。さらに首を回し、メガネを外すと眉間を揉んだ。
 可愛い!
 「アイチさん・・・いいねぇ」
 確かに。心の中で男性に同調した。
 メガネをかけなおしたアイチさんは僕のところに向かってきた。
 「お決まりですか?」
 いけない、急いでメニューから選ぶ。
 「えぇっとハートチーズバーガーとブレンドで」
 「チーズバーガーのつけ合せはポテトフライとポテトサラダのどちらになさいますか?」
 「じゃあポテトフライでお願いします」
 「はい、ブレンドはお替り自由ですのでお気軽にどーぞ」
 アイチさんはメモを取りおわるとメニューをさげようとした。その時僕は思わず呻いてしまった。
 「うっ」
 「ん?まだメニュー見ます?置いておきましょうか?」
 「あ、いや大丈夫です」
 メニューを取ろうと前かがみになったアイチさんのブラウスが目に入った。元々セクシーなデザインで、胸元もちょっと、いや結構開いていて、谷間が見えちゃってるんだけど、ブラウスを留めていたボタンが一つ無くなっていたんだ。
 だから隙間が開いちゃってて、中の・・・青いブラが見えてしまった。
 あのときだ、さっきストレッチをして胸を張ったとき、ボタンが飛んじゃったんだ。そりゃそうだよ、今にもはちきれそうだったんだから。
 うう、ちょっと、こりゃダメだよ。
 そんな僕のピンク思考には気がつかず、アイチさんはカウンター奥へと消えていった。
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[番外編]--ピノキオ | permalink | comments(6) | trackbacks(0)

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この記事に対するコメント

リュックの中には通帳とか入ってなかったみたいで、良かったですねー。でももしかして伏線になるようなブツが入っているのかもしれませんね。
そしてアイチ特有のトーク! まったく、本当に春日さんはMですよね。こういう女性が好みだなんて……。
それと、メニューの「ハート〜」ってのは「ハード〜」の読み間違いだという事態も十分にあり得る次第です。
アヴダビ | 2006/03/13 7:49 PM
ネット社会からも引きこもってるってどうよ?
というわけで、あたしが潜行している間にピノキオが進んでいるようでよかったです。
取材が活かされているというか、そのまんまじゃないですか!
ひゃっほーい。
あと数日でロジカル☆アイチの書き直しが片付くので、つばめ君は来週あたりから再開です。
終えたらまた校正……。
海太郎 | 2006/03/13 10:32 PM
原稿用紙買ったら妙に早く進んで、珍しく2時間かからずに書きあがりました。
原稿用紙だからなのか、それとも実際に聞いたことある台詞をそのまま書いているからなのかはわかりませんが。
ってこんな事実はありませんよ。
この喫茶店はミルキーウェイとアンミラをモチーフにしています。
春日 | 2006/03/14 4:05 PM
こういう喫茶店にいってみたいものです。
アイチさんは相変わらず小悪魔で……。
素晴らしいとはまさにこのことです。
つばめ君の再開も期待しています。
史嗚 | 2006/03/14 9:29 PM
先日はどうもありがとうございました。

なるほどー。
このように作品に生かされるわけですね。
店頭で挫けてる場合じゃありませんね。私も今度、勇気をだして入ってみようと思います。
もしかしたら、こんなステキなドッキリハプニングにお目にかかれるかもしれませんしね。フフ。
もくず | 2006/03/15 11:41 AM
ついにもくずさん登場ですね。
先日はどうもでした。
土曜日は大体朝から仕事(前日は遅番なのであまり寝ていない状態)で、しかも花粉。
それプラス投薬のせいで、オフ後家に着いたときはスイッチが切れたみたいになってしまいました。
次回池袋の時は是非ミルキーウェイにいきませう。
でも思ったほどじゃないですよ。

オフ会で「なんでピノキオなの?どこがのびるの?」とギリギリ発言をされたので赤面してしまいました。
もちろんその通りで、作品の流れ上、必然的なネタなんですけどぉ・・・えー、ちょっと恥ずかしい。
どうしよう、入れられるかなぁ。
春日 | 2006/03/16 3:27 PM
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