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ピノキオ故障中!004

 水を何度か飲んで気を取り直し、僕は男に尋ねた。
「あのそれでなんでみなさん知らないフリをしているんでしたっけ」
「だってよ・・・なんつうか、その話題触れにくいじゃねーか」
「それはそうだよね」
 あいづちを打つように、反対側から理系学生って感じのひょろい青年が口を挟んできた。僕もそっちを見返して尋ねる。
「え、なんでですか?」
「いくつかあるけど、一番の理由は、あの娘さ・・・すっごく可愛いだろ、な、可愛いだろっ」
「ええ、は、はいもちろん」
 冷静な口調から、急にテンションの上がった若者の勢いに押されてしまった。ちょっと驚いた。
「下手に話題になって有名になったらさ、色んなところにどんどん情報が広がって、すぐにでも芸能関係のスカウト来ちゃうんじゃないかなぁと」
 まぁ、あのルックスじゃ魔法とか関係なくてもありえる。
「そういうこった。そしたら俺らなんてもうぜぇぇぇぇぇぇったい相手してくんねーだろ。近づいただけで射殺されちまうってもんよ」
「射殺はされないでしょ」
「いや、僕なら間違いなくするね。半径十メートル以内に入ったら・・・殺す」
 架空の話なのに青年の目は本気になっていた。
「今ならまだなんとか近くにいられるだろ。とりあえず金さえ払ってればよ」
 こっちのお兄さんの発想は完全にキャバクラだ。
「それからさ、彼女はあんなことが出来るわけさ。それでアイチさんの能力が公になったら国が規制してしまうかもしれないだろ。エアガンだって規制されるんだから、魔法なんて絶対だよ」
 それはあるかもしれない。有害な位置づけとはいえ、所詮単なるおもちゃだったエアガンに今ではある程度の法規制がされている。しかし、何故あの力が話題にならないんだろう。
「世の中には知られて無いんですか?確かに僕も昨日まで知らなかったですけど」
「いや、もちろん、完璧じゃないしある程度知られているんだけど・・なんというかファンクラブ的な組織があって、まぁ組織って言っても僕ら有志一同なんだけど、それで話題の拡散を阻止したり、逆に誤情報を流して撹乱させてうさんくさくなるようにしているんだ。都市伝説にもならない感じで。結構みんなそれなりに知識とか実力ある人だからね」
 なるほど、そういう力が働いているのか。これでひとつの回答は出たけどさらに僕は疑問をぶつける。
「本人にはどうなんですか?」
 なんだかんだ言ってもあれだけ話しかけたらまずいんじゃないのかな。
「本当はよ、もちろんアイチさんとそのことについて話してーよ。でもよ出来ねーだろそんなこと」
「そんなことは無いでしょう」
「そうもいかねーんだって。ま、でもな、やっぱ話したいんだよ。そこでなんとかそのことを匂わせつつ話題をふって仲良くなれば、もしかして向こうから『あなただけに教えちゃいます、わたしのヒ・ミ・ツ!』みたいなことにならんかなぁと思っちゃってるわけよ」
 でた、また妄想だよ。わかるっちゃぁわかるけど。とはいえ、そう都合よくはいかないでしょ。
「でももしそんな二人だけで秘密を共有する仲になればよぉ、魔法がばれて規制されちゃってもいいかなぁって。だってよ、ふたりはすでにそういう関係なんだから、魔法なんてどうでもよくなってるわなぁ」
「君、それは邪道だよ。我々はこの世に本当に誕生した魔法少女という存在を純粋に楽しみ、慈しむべきなんじゃないのか」
「・・・そうはいうけど、アレみろよ、あの顔とスタイル。純粋にっていうけどよぉ、魔法が使えるブサイクと使えない美少女だったらお前どっち選ぶんだよ」
 この質問に学生風の人は腕組みをして悩みだした。確かに難しい問題だと思う。いわば自分自身の信念を試されているようなものだし。いや別に僕は魔法少女に信念があるわけじゃないけど。
「な、難しいだろ、だからとりあえずおいておいてそのまんまということでいいだろ」
「そうだね、今のところはそれしか無いな」
 なんて生産性の無い会話なんだろう。でもとりあえず今は次の疑問だ。聞きたいことはたくさんある。わからないことはどんどん知りたい。
「とにかく本人には聞かないとして、で、一体何者なんですか?」
「・・・魔法少女かな、やっぱり」
「いや、そうじゃなくって、どこからきたとか、何故あんな力が使えるのか、とかとか」
「いやー実は我々もまったく知らないんだよねー」
 僕は一瞬言葉を失った。そうなんだ、何も知らないんだ。
「この喫茶店自体は結構前からあったよ。んであの子は白樺高等学校の高校生で、アルバイト。まぁここが彼女の家なんだけど」
 お、白樺高校の生徒なんだ。春休みが明けたら僕の先輩になると思うと、それはそれでちょっとテンションがあがる。
「なんだろうねえ、ちょっと前から不思議なことがおきていたんだよ。そしてしばらくしてから彼女の活躍も目撃されるようになってきたんだ。ただみんな信じなかったけどね。それが逆に我々には都合がよかった。いち早く確信した僕たちが情報を守れたからね。ただ僕らが知らないずっと前からすでに活動していたのかもしれない」
「例えばどんなことがあったんですか?」
「うーん僕らが知っているところでは謎の邪教集団と戦っていたとか、あ、そうそうアレ知らないかな、怪盗キラメキ十三世の話。あ、田所さん、話してあげてくださいよ」
 今度は若者に声をかけられて、離れた席からがっちりとした体格の中年男性がやってきた。この人も知り合いみたいだ。それなのにみんなバラバラに座ってるんだなぁ。一人客として来てるのか。
 ちなみに怪盗キラメキ十三世の話はニュースでちょっと見た程度しか知らない。キラメキ十三世は世界を舞台に活動する超大物下着泥棒で、それまで盗みを失敗したことがなかったらしい。そのキラメキ十三世が二ヶ月前、日本に現れるという予告状を送ってきたのだ。獲物は年商三億のカリスマ主婦安藤小枝子さん(三十二)の高級ブラジャーだった。
「おれは警視庁の刑事部長で、あの事件の陣頭指揮を執っていたんだ。で、その時どうやらアイチさんもキラメキの野郎を追っていたらしいんだな」
「え、刑事さんなんですか?今日はお休みですか」
「ん、いや今は昼休みだ」
「昼休みって・・・どこから来てるんですか?ここから警視庁って遠くないですか」
「え、まぁそれはいいじゃないか。で、野郎は俺たちの警備体制もさることながら、安藤さんの家に出前に来たふりをして入り込んでいたアイチさんのおかげもあって、ホシを追い詰めたんだな。だが、ふと見るとアイチさんからブラをするっと抜いたんだ。あのでっかいのをだぞ。むしろそっちのほうが魔法だったぜ。それでその隙に本当の目標を奪いやがったのさ。そして用意してあった気球で逃げ去るキラメキだったけど、俺たちはどうしようもなかったさ。でもやっぱアイチさんは違うなぁ。すぐさまヘリコプターで追いかけて気球を捕まえたんだ。特殊なヘリらしく、機体からマジックアームが伸びてがっちりとな。だが、キラメキのやつもやるもんで、煙幕をはってさっと逃げちまったんだなぁ。『今日は君たちのチームワークと友情に敬意を表してこれで去るであるよ、あでぃおーす』とか気障なこと言ってよ。でも盗んだブラはなんとか回収できたんだ。捕まえることは出来なかったが、初めてやつの犯罪を防いだということで俺たちも鼻高々よ。今まで世界中の腕っこきがやつにしてやられてからなぁ。アイチさんの存在は上の方には言わなかったからとりあえずばれてないと思う。それにアイチさんのブラは証拠品としてちゃんとオレが保管してるんだ」
 まるで自分の手柄のようにペラペラ喋っていたが、最後になんかとんでもないことを言い出した。
「えええ、なんで刑事さんが保管してるんですか、それじゃ変態じゃないですか」
「おおお、お前何馬鹿なこと言ってんだ。俺が保管するのが一番安全なんだよ。それにちゃんと他の人のは鑑識に回している。だから全然やましくなんか無いんだよ」
 しまった、という顔をした刑事さんが反論するが意味を成していない。聖職者のモラル低下はこんなところでも確実にすすんでいるみたいだ。
「田所さーん、ちょっと良いですか。今の話は初めて聞きましたよ」
 驚愕の行為を耳にしたほかの男性客たちは席を離れ、店員に見えないところに変態刑事を連れて行くとぼこぼこにし始めた。戻ってきたときには刑事さんの顔の形はだいぶ変わっていた。

「あれは覚えてんだろ。前に某国だかマッドサイエンティストだかが日本に核ミサイル撃ったことあったよな、日本に一発。あれを阻止したのもアイチさんじゃないかって」
 もちろん知っている。そのミサイルの詳細は一切が不明で、ただ飛来してきていることだけがニュース速報になり、大混乱になった。そんなことがあっても、結局平和になってしまえば、今ではそのことを口にするものもいないし、実際僕も昨日まで忘れていた。それはそうかもしれない。発射されたって言われたけど、それが何がなんだかわからないうちに消失したんだから。今のなんだったの?って感じだ。
「あの時もテスラガインが飛んでいたのを見たってやつもいるんだ。まぁほんとかどうかわからんけどよ」
「それは僕も見ました」
「ほんとか、そうかぁ、ほんとだったか」
 確かにテスラガインならミサイルも止められるのかもしれない。それ以前にそのミサイルはなんだったんだろう。昨日の怪獣といい、そういったことが僕の知らないところで頻繁に起こっているんだろうか。
「他にもいくつかあるけどよ、最近ので一番でかいやつっていったら、やっぱあの戦車のあれだな。おっと」
「え?なんです」
 僕が聞き返すも間もなくみんな自分の席に戻っていった。気がつくとカウンターに差し出された大きなハート型の皿をアイチさんが受け取っていた。 それはハンバーガーのようで、きっと僕のだ。
「はいっハートチーズバーガーとブレンドお待たせしました。ご注文以上でよろしいですか」
 僕はだまって頷いた。
「伝票失礼しまーす。ではどうぞごゆっくり。あ。ブレンドはお替り自由です」
 そういうとペコっと一礼をしてくれた。もちろんこの時も僕の位置からはブラウスの中がちらちら見えていて、ドギマギした。そんなことが気付かれてないか不安だったが、アイチさんはそのままカウンターに戻っていった。
「それじゃあ休憩に行ってきまーすっと」
 アイチさんは厨房や他のウェイトレスに声をかけるとバックヤードに続く廊下へと向った。
 廊下の入り口には姿見サイズの鏡があって、アイチさんはふとそれに目を向けた。
一瞬目を細めると眼鏡を直し、もう一度鏡を見た。
「あ、っつぁ」
 変な声をあげるとブラウスに手をあて、そしてキっとこっちを見た。
 もちろん僕はアイチさんを見ていたので、目が合ってしまい、反射的に目をそらしてしまった。
――しまったぁ
こんなときは何もわかってないようなふりして会釈でもしとかなきゃいけないのに、これじゃ完全に「見てました」って言っているようなもんだ。
 そしてアイチさんはツーンといった感じで向こうをむくと、店の奥に消えていった。
 ちょっとつらい。
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[番外編]--ピノキオ | permalink | comments(3) | trackbacks(0)

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この記事に対するコメント

つらい。
会話シーンなんだから地の文なんかほんとはいらないよね。
なんとなく小説っぽい体裁を整えるために地の文入れているだけで。
作品としてはマイナス要素じゃない?
まぁ無理やり入れましたが。

あと例によって加筆が・・・1話だけど。
連載って難しいっすね。
春日 | 2006/05/29 7:18 PM
あっふん。
なんだか読んでると涙が出てきます。

キラメキ十三世って響きがステキ。
下着ドロだけど。
海太郎 | 2006/06/01 10:35 PM
アイチもつばめくんもそうだけど、男キャラは変態しか登場しないんだから!
アヴダビ | 2006/06/06 7:46 PM
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